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ミニチュア制作記録。たまに大きいものも。

コートのボタン付け。足付きボタンに根巻きは必要か

コムサイズムで4、5年くらい前?に買ったピーコート。長く着られるベーシックなデザインでお気に入り。そういえば前の仕事辞めてここ3年くらい着なかったな。ワードローブアルバム用に写真を撮ろうとした時、その理由を思い出した。

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このボタン、とにかくしょっちゅう取れる。

このコート、コロンと丸っこい足付きのボタンが気に入って買ったんだけど、とにかくこのボタンが取れる取れる。車での通勤時にしか着てないのに、毎週のように順番にボタンが取れかけていて、しょっちゅうつけ直していました。

ボタンは全部で10個。フロント6個、袖に左右各1個、背中のベルトに2個。写真向かって左上のボタンを除き、他のボタンはどれも1回は取れてると思う。

この写真を撮った時点で、後ろのベルトのボタンが2個とも取れている。ボタンをつけるのが面倒なのと、また取れて今度こそボタンをなくすのが怖いもんで、後ろのベルトは別にまあなくてもいいか…と、取れたまま放置していた。で、最後に左身頃、向かって右下のボタンが取れて、いよいよボタンつけが面倒くさくなって着なくなったと。たしかそんな経緯。

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他のボタンも取れる寸前。あぶないあぶない。

取れないボタンのつけ方を調べよう。

それだけしょっちゅう取れてたけど、奇跡的に紛失は免れていて、ボタンは全部手元にある。もちろんベルトも。多分、金属製のボタンで中空になっているので、落とすとカランカラン…と響く音がするせいだと思う。音に気付いて拾ったことが何度かある。

デザインはすごく気に入っているし、ベーシックなデザインなのでまだまだ着られる。できればちゃんと直して着たいのだ。この機会に、どうしたらこのボタン取れる問題を解決できるのか、じっくり調べてみようと思った。

で、「コート ボタン つけ方 取れない」的なキーワードで色々調べてみたところ、いくつかのポイントが挙がってきた。

  1. 根巻きをしっかりする 
  2. ボタンつけ用の糸を使う
  3. 力(ちから)ボタンをつける

主にこの3つ。ちょっと説明してみる。

根巻きをしっかりする

根巻きというのは、簡単に言うとボタンの根元を糸でぐるぐる巻くこと。多分家庭科で教わっているはず。

ボタンというのは、その役割上、布地との間に「もう一枚布地が挟まる隙間」が必要(飾りボタンは別として)。じゃないとボタンがかけにくいし、かけた時に、間の布地の厚みで糸が常に引っ張られた状態になってしまう。そこで、スペーサーとして根巻きが必要になる。

ボタンをつける際、ボタンと土台の間に布地一枚分の隙間を空けて何度か糸を渡した後、渡した糸の束に、ボタンから布地に向かって残りの糸を隙間なくぐるぐる巻きつけていく。これが根巻き。

スペーサーでもあり、ボタンと土台を結ぶ糸を、布地との摩擦から保護する役割もある。

ボタンつけ用の糸を使う

いつもは手元にある適当な糸(ミシン用のポリエステル#60)を使ってつけていたのだけれど、細さや素材の点で、やはりきちんとボタンつけに適した糸を使うべき、とのこと。

ボタンつけ用の糸は太さが#20~#30とかなり太めで、素材は、ポリエステルが主だけど綿100%がよいという情報も。

まあ太けりゃ大抵頑丈だよね、それは簡単に理解できる。でもなんで一般に丈夫なイメージの化繊じゃなくて綿なのだろうか。

調べてみると、ポリエステルのようなつるつるした滑りのいい糸よりも、綿の糸の方が表面が毛羽立つので、根巻きをした時、糸同士が絡み合って頑丈になりやすいとか。

ふーん。なるほど。じゃあ今回はそれにしてみよう。

力(ちから)ボタンをつける

力ボタンというのは、布地を挟んで表のボタンの反対側につける、装飾性のない小さなボタンのこと。

表ボタン-布地-力ボタンと往復しながら両方同時につけることで、糸にかかる力を布地に刺した「点」で受けるのではなく、この力ボタンの「面」で受けることによって、布地が傷みにくくなるのです。

想像するに、根巻きをすると糸がギュッと引っ張られて、さらに布地にかかる力が増えると思われるので、これもしっかりやっておいた方がよさそうだ。

基本的なことには、ちゃんと根拠がある。

根巻きも、ボタンつけ用の糸が売ってることも、力ボタンの存在も、知識としては知っていたけど、あまり重要視したことはなかったなあと。こうして「何故それが必要なのか」をきちんと理解すると、基本的なことってやっぱり大事なんだなぁと。

基礎っていうのは決して「初心者向けのやりやすい方法」ではなくて、「最低限押さえておかなくてはいけない根拠のある重要なポイント」でできているのだと思った。

道具と材料を揃える

さて。基本的な「取れないつけ方」が分かったので、休憩時間にイオンに走り、パンドラハウスで糸と力ボタンを買ってきた。

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ドゥン。(効果音)

糸選び。今回は綿で。

糸はこのダルマの手縫い糸(綿)とフジックスのキングスパン(ポリエステル)というのが売っていました。今回は今まで使っていなかった綿の糸を試してみようと思っていたのでダルマをチョイス。

ダルマはすみっこに5色くらいしか置いてなかったのに対し、フジックスは棚1段使って展開してあって、色のバリエーションで言ったら圧倒的にフジックスなんですが、今回は黒だし、あんまり関係ない。

 一応色は56色展開している模様。でも置いてない。

なんかこういう昔ながらな感じ、好きなんですよね。
見てこの仏頂面。媚びる気ゼロ。素敵。

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ロングセラーの商品って、やっぱり長く愛用されるだけの何がしかの理由があることがほとんどなので、明治34年創業の重みに期待しよう。

こちらは100色展開。フジックスさんも、大正10年創業と充分に老舗だし、ぶっちゃけどっちでもいいんですけどね。

フジックスのボタンつけ糸は「特殊樹脂加工でこしを持たせた」とあるけど、糸割れしないとか、張りがあって縫いやすいとか、そんな感じなのかな?
「樹脂同士がくっつき合う」とかだったら、綿の「糸同士が毛羽で絡む」という利点に並べるわけだから、こっちがいいかなと思うけど、調べても詳細は謎でした。

針選び。多分メリケン針5号長針が正解。

針は特に何も考えずにピンクッションに刺さってる中から「それっぽいの」を使っちゃうんですけど、糸には使用に適した針の種類がきちんと提示されているのが普通なので、ボタンつけが初めてでこれから針を買うっていう場合は、それを参考にしましょう。前述した2種類の糸の場合、こんな感じ。

  • ダルマ:メリケン針4~9
  • フジックス:メリケン針5~7

上で「それっぽいの」と書きましたが、ざっくりとした針の選び方としては、特殊な場合を除き、生地の厚さと縫い目の大きさから考えるのが基本です。

厚手の生地には太くて長い針、薄手の生地には細くて短い針。しつけや裾のかがり縫いなど、大きくざっくり縫う時は長い針。キルティングなど細かく縫う時は短い針。この辺は実際縫ってみれば、なんでやりにくいのか、なんでやりやすいのか体感できます。

あとは針穴の大きさとか、針先の尖り具合の傾斜が急だとか緩やかだとか細かい話もあり、それぞれきちんと根拠があるわけですが、素人裁縫なら上のざっくり法で問題ないと思います。

  • 太くて長いもの(厚地用。目安5号以下)
  • 細くて長いもの(薄時用。目安7号以上)
  • 細くて短いもの(薄時用。目安9号前後)

 この3種類を持っていれば、大抵なんとかなります。さらなる仕上がりの精度や作業の快適さを求めるなら、糸と生地に合ったものを吟味しましょう。ちなみに「太くて短いもの」は、普段ほとんど出番はないので特に必要ないです。

今回のはメリケン針5号の長いやつが多分最適解な感じですが、帰って確認したら5号が手元になかった。どこ行ったんだ。仕方ないので今回は7号でやってみます。上のざっくり法だとちょっと細いかな、という感じなのですが、まあ行けるだろう。

さて。材料も買ったことだし、よしじゃあいっちょやったるZE!と針に糸を通したところで、ふと気付く。

…このボタン足付きなんだけど、根巻きはするべきなの?

どうなんだろう。

ここでしばらく悩む。足付きボタンのつけ方を調べても、「根巻きは必要ない」派がほとんどの模様。まあ足がスペーサーになるわけですからね。理屈として分かるわけ。でも手順に根巻きが入っている説明も見つけたので、いよいよどっちが正しいのか分からなくなる。

…ピコーン。(効果音)

ふと閃いて、布地の厚みをノギスで測ってみた。もしかしたら、ボタンの足の長さが微妙に足りてなくて、そのせいでボタンが引っ張られて取れやすいのかも?だとしたら、足の長さ+根巻き分できっちり隙間を確保して、「ボタン取れずにお気に入りコート着放題の薔薇色ライフ」が近づくかも!

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……。

3mm。ふむ。足の長さもちゃんと3mmあるし、ちゃんとそこは計算された作りになっているのね。まあ当たり前か。当たり前だよね。うーん。決め手にならんな。

結局、正しいかは分からないけど、根巻きもすることにした。

理由は二つあって。

まずは、ボタンを固定しようと糸をしっかり引いて止めるので、足が布地にめり込んで、多少隙間が狭くなっているのではないか?ということ。布地は厚手でふかふかしているので、これはありそうだと思ったり。

もう一つは、綿の糸の「糸同士が絡まって頑丈になる」という特長も活かしてみたいということ。調べているときに見つけたんだけど、ためしてガッテン出演のボタンつけ名人曰く、綿の糸で根巻きした部分に何度か針を刺し通すことで、玉止めが不要になるとのこと。これもその、糸が絡む特長を活かした方法なので、試してみたいなあと。

で、実際につけてみました。その中で気付いたこと。

力ボタンは透明のものがつけやすいかも。

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この通り、力ボタンもきちんとつけました。

やってて気付いたのですが、不透明な力ボタンは慣れないうちは難しいかも。布地に対して垂直に刺せる穴空きボタンならそれほどでもないかもしれませんが、足付きボタンだとどうしても針が斜めになるので、裏から穴が狙いにくいという、思いがけない罠が。

表から見えるものではないので、よっぽどこだわりがなければ、針がどこに出てるかが見える透明なものがやりやすいんじゃないかと思います。

ポケットにかかってしまうボタンも、力ボタンはつける。

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一番下のボタンはポケットにかかる位置にあるので、本来なら力ボタンを付けずに表地だけすくって縫いつけるのが正しいのだと思う。でも、右身頃の飾りボタンはともかく、左身頃のボタンは、身体を曲げた時など、上のボタンより引っ張られることが多いはずなので、きちんと力ボタンを付けることにした。ポケットの中に力ボタンが出る形になって、実際手を入れると多少当たるけど、ボタンが取れやすいよりはその方が断然マシ。

何も考えずそのままつけようとしたらポケットの裏地がずれてしまうことに気付いたので、まずは平らな状態で表地と裏地をまち針で合わせて固定しておくことにした。写真で横向きに刺してるのがボタン位置の目印で、縦に刺してる2本が固定用。

これで、縫いあがったらポケットが何か縒れてるなんてことにならずに済む。ならずに済むけど、縫ってると指にブスブス刺さる。痛い。何回か縫ったら、まち針は外してしまって大丈夫です。

根巻きに針を刺すのは思ったより骨が折れる。というか、針が折れる。

前述した通り、玉止めの代わりとして、根巻き部分に布地に対して平行に針を刺すのですが、これが思ってたよりかなり固いです。

根巻きの密度に糸の太さ、綿の摩擦の強さもあって、刺す時にちょっと変な方向に力ががかかったのか、一度針を折ってしまいました。根巻きに刺す方法を採るなら、基準より少し太めを選ぶといいかもしれません。今回7号で折れたので、やっぱり5号が正解か?一度折った後は注意して縫ったので大丈夫でしたが。あまり太すぎるとそれはそれで刺しにくくなりそうです。

でもこの方法、玉止めの代わりとしては十分機能している模様。ボタンをぐいぐい引っ張ってみても、まったく緩む様子はありません。そもそも力のかかる方向も違いますしね。

玉止めの場合、玉止め自体がほどけてしまったらアウトなので、これはかなりいい方法なんじゃないかと思います。

内側で止めるボタンについて

右身頃一番上のボタンは、裏側にコートの内側で止めるボタンが付いてます。

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表は飾りボタンなので、最後の根巻きは裏のボタン側で行います。今思うと両方根巻きしてもよかったかも。

表のボタンをつけつつ、裏のボタンは浮かせるようにして、交互に糸を通していくのですが、地味に難しい。でもまあ何とかそれなりに仕上げることができました。

背中のベルトは仮止めして、鏡で位置を確認してから。

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ベルトは完全に外しちゃってたので、元あった位置が分からず。まち針で仮止めして、羽織って鏡で位置を確認して、微調整。

平らに付けたけどこれでいいのかな?少し左右を寄せてあったような気もしなくもない。でもまあ元々シェイプされてるデザインだから、平らでいいのかな。

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そんな感じで、ミッション完了。

結論。足付きボタンにも根巻きは必要だった。

肝心の 仕上がりを載せてなかった。

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見づらいけど、足の下の部分に根巻きしてあります。足部分には巻きません。

せっかく足の底が平らで安定しそうなのに、根巻きしたらボタンがプラプラしちゃうんじゃないかとちょっと心配だったのですが、不要な心配だったようで。

やっぱり根巻きして正解だったみたい。縫いつけた糸が根巻きによってギュッと締められるので、土台にしっかり固定されるし、ボタンの横滑りも全くありません。根巻きせず縫いつけた今までのボタンとは段違いの安定感があります。

これは期待できそう。

実際しばらく着用してみないと確かなことは言えませんが、今後は「足付きボタンにも根巻きは必要説」を強く推していくことになりそうです。